言語文化教育研究:Studies of Language and Cultural Education

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第9巻

2号(2010年秋)

留学生と日本人学生の異文化間コミュニケーション能力育成を目指した協働学習授業の提案――異文化間コミュニケーション能力理論と実践から
北出慶子(立命館大学文学部・言語教育情報研究科)
概要: グローバル化で異文化接触の機会が急増し,外国語学習の目的として異文化理解及び異文化間コミュニケーション(以下,ICC)の意義が重要視されるようになってきている。本稿では,ICC能力伸展という共通の目的での留学生と日本人大学生の協働学習活動を提案する。ICC能力の意義,定義,学習方法についての外国語・日本語教育における理論的背景よりICC学習に必要な要素を検討し,ICC学習実践例と内省から活動の意義と改善点を述べる。
キーワード: 異文化間コミュニケーション能力,協働学習,構築主義,授業設計
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クラス活動への「主体的参加」とは何か――「イベント企画プロジェクト」を対象としたアクションリサーチ
古賀和恵,三代純平,古屋憲章(いずれも早稲田大学)
概要: 本研究は,「総合活動型日本語教育」に対する問題意識から構想された,学習者がイベントを企画・実施するという実践のアクションリサーチである。本稿では,実践の省察により,まず,学習者がクラス活動へ主体的に参加していくプロセスを明らかにする。また,そのプロセスから学習者が得た学びに関し,考察する。そして,以上を踏まえ,クラス活動への主体的参加の意味と意義を述べる。更に,従来,「総合活動型日本語教育」で論じられてきた「学習者主体」を再考する。
キーワード: 総合活動型日本語教育,学習者主体,実践コミュニティ,「当事者意識の共有」,「協働意識の共有」
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1号(2010年春)

協働で書く試み――ピア・ライティングとしての「リライト活動」の可能性をめぐって
牛窪隆太(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
概要: 本稿では,書くことに注目した「リライト活動」の実践を示し,「ピア・ライティング」としての可能性を論じる。作文授業においてピア・レスポンスを行う場合,「どのように書くか」という問題は,常に学習者の自主的な推敲と教師添削の間で揺れ動く。「リライト活動」はこの「どのように書くか」という問題を協働学習に新たに位置づけようとする試みである。まず,「意味のわからない文」をめぐって,表現意図と表現,読みの間にある「ずれ」を指摘し,書くことに焦点化した協働学習において,読みから表現意図を「引き出し」書く方法を「引き出し」「突き合わせ」「突き戻す」ことを提案する。次に,この考えの下に実践した「リライト活動」において,学習者がリライト文を産出する過程を授業データから記述し,協働学習として書きの活動を設定する際の観点を論じる。最後に,活動をデザインする教師の発想の転換を主張し今後の課題について述べる。
キーワード: 教師添削,「引き出し」「突き合わせ」「突き戻し」,「リライト活動」,ピア・ライティング,発想の転換
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日本語教師のライフストーリーを語る場における経験の意味生成――語り手と聞き手の相互作用の分析から
飯野令子(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
概要: 筆者がこれまで実施した日本語教師のライフストーリー・インタビューの場では,聞き手である筆者との相互作用によって,語り手である教師の経験が語りとして引き出されるのみならず,語り手も意識していなかった経験の新たな意味生成が行われた。本稿ではその過程をデータの分析から具体的に示し,日本語教師のライフストーリー研究が,それに関わる教師の認識や実践の変容の可能性,つまり教師の成長支援の可能性を内包することを指摘する。
キーワード: 日本語教師,ライフストーリー,語りの場,相互作用,経験の意味生成
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ことばと自己アイデンティティを結ぶために――日本語教育における自己アイデンティティの位置づけ
高橋聡(早稲田大学大学院日本語教育研究科:執筆当時)
概要: 私たちはことばによって生きている。この生きる行為としてのことばを育てるためには,生きる主体である自己アイデンティティへの視点が不可欠である。学習者をよりよく生きようとしている一個人として捉え,その一個人を主体とし,自己アイデンティティとことばをどう結ぶかは,言語教育実践の課題のひとつである。本稿では,自己アイデンティティとことばを結ぶ実践構築のために,日本語教育における主要な実践の自己アイデンティティ観をデータに,言語教育における自己アイデンティティとは何かを考察し,言語教育における関係性的アイデンティティの意義について述べる。
キーワード: 言語教育,自己アイデンティティ,同一性,アイデンティティの所在,関係性的アイデンティティ
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