言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

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第2号(2015年4月1日)

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言語文化教育研究学会メールマガジン 第2号
ALCE: Association for Language and Cultural Education

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■ 第2号:もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
--◆◇学会事務局より◇◆----------------------------------------------
第1回年次大会御礼

--◆◇月例会報告◇◆--------------------------------------------------
【2月27日(金)】第30回(特別企画)月例会報告「ワークショップ、デ
ザインシンキングの発想 ― 教育イノベーションの発見と可能性」相野谷威雄氏

--◆◇会員からの一言◇◆----------------------------------------------
第1回年次大会での発題を振り返り               瀬尾匡輝

--◆◇おしらせ◇◆----------------------------------------------------
【発表者募集:4月15日締切】第2回研究集会in金沢(6月開催)人類学・
 社会学からみたことばの教育―言語教育における言語イデオロギーを考える
【発表者募集:4月13日締切】カナダ日本語教育振興会年次大会「教師の役割・
 授業の再考 ― 多様化する日本語学習を背景に」
【投稿募集:5月31日締切】学会誌『言語文化教育研究』特集テーマ「教室・
 学習者・教師を問い直す」
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■ 学会事務局より ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
第1回 年次大会御礼
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東京都内は、桜も咲き始め、すっかり春らしい季節となりました。

さて、去る3月21日(土)東洋大学にて、第1回年次大会「教室・学習者・教
師を問い直す」が開催されました。

おかげさまで多数の方にご参加いただき盛会のうちに終えることができました。
本大会をパネリストとして、発表者として、参加者として、運営ボランティア
として支えてくださった皆様に厚く御礼申し上げます。

続きまして、第2回研究集会を6月21日(日)金沢にて開催予定予定です。こ
ちらもぜひご参加ください。学会運営委員一同、みなさまのご参加をお待ちし
ております。
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■ 月例会報告 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【2015年月27日(金)開催】第30回(特別企画)月例会
「ワークショップ、デザインシンキングの発想 ― 教育イノベーションの発見
と可能性」   相野谷威雄氏(ヴィー・ディー・エス株式会社代表取締役)
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2015年2月27日に、月例会特別企画として、ワークショップ「デザインシンキ
ングの発想」を開催しました。講師に、デザイナーで、デザインシンキングの
研究者でもある相野谷威雄先生をお招きし、言語文化教育研究学会では初とな
るワークショップを行いました。当初、20名定員で募集しましたが、好評につ
き、26名の参加がありました。

最初、デザインシンキングの概念についてレクチャーを受けたあと、3つのタ
スクを、グループで行う形式のワークショップでしたが、最終的には、写真を
切り貼りし、そのビジュアルのイメージから、理想の学校を言語化していくと
いうことをしました。ビジュアルからことばを紡いでいくプロセスは、日ごろ、
私たち言語教師があまり体験しない作業で、新鮮でした。同時に、私たちが、
日常的にどれだけことばにしばられているのかも実感せずにはいられませんで
した。ワークショップ後の懇親会で、講師の方に聞くと、デザインを学ぶ学生
とワークショップをするときは、感覚的にビジュアルを作り上げてから、イメー
ジを具体的にしていく過程でことばも具体的になるそうです。

一方、私たちは、写真を切り貼りするプロセスで、どこか「理想の学校」をこ
とばで描きながら、そのことばにあった写真を探していた気がします。ことば
とコミュニケーションの可能性と難しさを、漠然とですが、体感することがで
きた非常に有意義なワークショップであったと思います。

また、後日、多くの方から好意的なフィードバックをいただきました。その中
で、印象に残っているのは、各グループが思い描いた「理想の学校」のイメー
ジが似ていたこと、それが、自由で多様性を尊重したものであったことから、
この仲間たちと日本語教育を続けることに希望が持てたというものでした。希
望が共有できる、そんな学会に成長していければと考えています。
                         (企画者:三代純平)
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■ 会員からの一言 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
第1回年次大会での発題を振り返り         瀬尾匡輝(茨城大学)
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2015年3月21日に東洋大学で行われた言語文化教育研究学会の第1回年次大会
にて、私達、つながろうねっトは第10回目となる勉強会をフォーラムという形
で行った。
https://sites.google.com/site/sekaitsunagaru/benkyokai10
本来であれば、このような学会の場で勉強会を行うことはありえないことなの
かもしれないが、言語文化教育研究学会ならではの柔軟性に感謝したい。

つながろうねっトの勉強会は、インターネットでも配信されている。勉強会の
ビデオはこちらから https://www.youtube.com/watch?v=LZyaGbgMkb4
(個人名・組織名はプライバシー保護の観点から編集し、削除してあります)

「日本語学習・日本語教育の商品化と消費という視点から教室・学習者・教師
を問い直す」と題した本勉強会には、19人の方(会場15人、オンライン4人)
に参加いただいた。まず、私達から話題提供を行い、「商品化と消費」を定義
したうえで、英語教育における事例を示した。そして、勉強会の約1か月前に
公開した事前ビデオ(https://www.youtube.com/watch?v=MVk5RzhvyMI)を視聴
いただいた方々へのアンケートの結果を報告した(アンケートの結果はこちら
から閲覧可能 https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=sites&srcid=ZGVmYXVsdGRvbWFpbnxzZWthaXRzdW5hZ2FydXxneDo0Zjg4MzY0ODA5OTQ2ZWNl)。

その後、参加者に4つのグループ(うち1グループはオンライン)に分かれて
もらい、

・「日本語学習・日本語教育の商品化と消費」による教室・学習者・教師への
 メリットとデメリットはどのようなものがあるのか
・上記の議論で挙げられたメリットをさらに活かすには、また、デメリットを
 軽減するにはどうしたらよいのか

を中心に30分ほど話し合った。そして、最後の30分は会場全体での議論を行っ
た。上記のディスカッショントピックを設定したのは、私達は『「商品化と消
費」は是か非か』という二項対立的な議論をしたかったわけではないからであ
る。それよりもむしろ、「商品化と消費」が孕む問題点を様々な観点から理解
し、その問題点を乗り越えていくことによって、新たな方向性を生み出すこと
ができるのではないかと考えた。

そのような前提の下、会場全体での議論は前向きな方向へと進んでいった。

まず、学習者のウォンツやニーズがあるから“商品”を作り出すという発想で
はなく、ウォンツやニーズがまだ学習者自身に意識されていなくとも、教師が
新たな価値を創造し、それを商品という形にして見せていくことによって、利
が生み出される結果になるのではないかという指摘があった。現状では、教師
たちは日々行っていることを教室の中に留めてしまっている傾向があるが、そ
れらの実践そのものが商品になり得ると考え、積極的に外に発信していくこと
が重要なのではないかという声もあった。

そして、そのためには、教師が自分は何が重要だと考えるのか、どんなことを
したいのかという信念をしっかりと持ち、主体的に関わっていくことが重要だ
と意見を述べる参加者もいた。

また、学生からの評価にとらわれるのではなく、機関内外に発信し、そこで
「おもしろいことが起きているんだ!」ということを周囲に見せていくことで、
新たな価値観を持った実践を周囲に広げていくことができるという声もあった。

さらに、短期的な目標や目的だけを見るのではなく、長期的な視点で持続可能
な教育とは何かを考え、様々な方向に働きかけていく必要性がある。また、持
続可能な教育を考えた時に学習者だけではなく、教師にとっても楽しいもので
あることが必須であり、このような学会や勉強会などの場を通して前向きで建
設的な議論をしていくことも、その一つの手段であると言える。

しかし、オンラインの議論では、教師とプログラム運営者側との権力関係や教
師間の権力関係(常勤―非常勤、ベテラン―新人など)によって、自身が目指
したい実践を行いにくい現状があり、苦しんでいる教師もいるのではないかと
いう指摘もあった。「商品化と消費」の議論を「学習者―教師」の間の問題と
して捉えるのではなく、「教師―学校」「学校―社会」などより広い社会的文
脈を射程に入れて議論を進める必要があるのだろう。

そして、新しい価値や利を生み出していく過程では、ポップカルチャーや言語
的知識といった表層的な内容のみにとらわれたり、ICTを活用するといった方
法ばかりに目を向けるのではなく、何が教育なのかという本質的なものを深く
考えていかなければ、真に「価値のある」教育実践というものは生み出されな
いのではないだろうか。

このような議論が会場ではなされていたが、私たちはこの議論をここで終わら
せようとは考えていない。2016年6月に香港で開催される言語文化教育研究学
会の研究集会では、「商品化と消費」をテーマとし、参加者とさらなる議論を
行いたいと考えている。発表応募の締切は2015年12月頃を予定しているので、
ぜひそれまでに「商品化と消費」の議論をさらに深める研究や実践を行い、研
究集会で共有していただければと思う。

詳細は2015年6月頃告知する予定で、現在計画を練っている。もしこんな企画
がしたい、こんなことをやってみたいというご意見があれば、ぜひ瀬尾
(masakiseo@gmail.com)までご連絡を!(「商品化と消費」以外のテーマでも、
言語文化教育研究学会の趣旨に沿った内容であれば応募可能にすることも検討し
ています)

勉強会終了後、数人の参加者と話したところ、テーマを「日本語教育の商品化
と消費」とするのではなく、「言語教育の商品化と消費」や「教育の商品化と
消費」にしたほうがいいのではないかという意見もいただいている。そのあた
りもぜひ検討したいと考えており、ぜひご意見をいただきたい。

日本語教育・言語教育・教育をビジネスチャンスとして捉える企業や教育機関
によって教師が搾取されることのないよう、ともに議論しましょう!
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■ おしらせ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
━【発表者募集:4月15日締切】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第2回研究集会 in 金沢(6月21日開催)
テーマ:人類学・社会学からみたことばの教育 ― 言語教育における言語イデ
オロギーを考える
https://alce.jp/meeting/
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●日時:2015年6月21日(日)10:00~17:00
●会場:石川県政記念しいのき迎賓館
●主催:言語文化教育研究学会
●発表申し込み及び参加方法: https://alce.jp/meeting/
●定員:100名(※先着順:会場の都合により、定員に達し次第、締切りと
させていただきます。)
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━【発表者募集:4月13日(月)締切】━━━━━━━━━━━━━━━━━
カナダ日本語教育振興会(CAJLE)2015年度年次大会(カナダ・バンクー
バー)テーマ「教師の役割・授業の再考 ― 多様化する日本語学習を背景に」
http://www.jp.cajle.info/cajle2015/
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●日時:2015年8月20日(木)・21日(金)
●場所:サイモンフレーザー大学ハーバーセンター
●基調講演・教師研修:青木直子先生(大阪大学)
●公開討論会:Wendy Carr先生(カナダ第二言語教師会/ブリティッシュコロ
 ンビア大学)
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━【投稿募集:2015年5月31日(日)締切】━━━━━━━━━━━━━━━
学会誌『言語文化教育研究』
特集テーマ「教室・学習者・教師を問い直す」
https://alce.jp/journal/
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『言語文化教育研究』では、「特集テーマ」を設定しています。

「特集テーマ」は、前年度の年次大会のシンポジウムのテーマを引き継ぎます。
このことにより、学会の活動を有機的に連動させ議論を深めていきます。13巻
の特集テーマは「教室・学習者・教師を問い直す」です。

特集テーマに関する論文は、「特集論文」と明記の上、ご投稿ください。なお、
特集テーマ以外の論文も「一般論文」として募集しています。
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誌 名:言語文化教育研究学会メールマガジン 第2号
発行日:2015年4月1日
発行所:言語文化教育研究学会 事務局
    〒187-8505 東京都小平市小川町1-736
    武蔵野美術大学鷹の台キャンパス三代純平研究室内
編集、発行責任者: 言語文化教育研究学会広報・連携委員会 松井孝浩
お問い合わせ・情報掲載依頼:ezine@alce.jp