言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

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第10回研究集会プレ企画
届け!私の「現場からは以上です!」

開催報告

  • 日時:2022年6月26日(日)13:30~16:00
  • 場所:オンライン(ZOOM)開催

1.開催趣旨

様々な分野の人々とお互いの「現場」を見つめ直す企画です。「現場」という言葉を聞いて思い浮かべるイメージは人それぞれです。また,コロナ禍の影響によって,「現場」のイメージや可能性が広がった人,変化した人も多いと推測できます。そのような今,お互いの現場を覗きあい,自他の現場の良さや課題に気づき,見つめ直せる場を設けた企画です。

2.研究集会委員参加報告

小西 達也(日本語教師,ハイフォン大学[ベトナム])
事前作業で,参加申込者に自己の現場をご自身でふり返り,ご自身の「現場マップ」を作成してきてもらいました。突然,「ご自身の現場マップを作成してください」と言われても難しいものですので,研究集会委員が作成した二点を公開し,イメージをしやすいように図りました。

プレ企画当日,さらに「現場」を見つめ直しやすくするために,また「現場」について議論をしやすくするためにも,前半は二名の方にインタビュー形式で「現場」について話していただきました。二名の方ともに,言語教育分野以外の「現場」でご活躍されている方でした。私は日本語教育を中心とした「現場」に日ごろからいますので,改めて「現場」のとらえ方が異なることに気づかされたものです。一人目は住職をされている方でしたが「すべての場所が現場になりうる」とお話された点,二人目(事前インタビュー動画)は客室乗務員をされている方で,「現場が閉ざされている空間になる」とお話されていた点が,それぞれ特に印象的な点でした。「現場」というものは,広く捉えることもできれば,狭く捉えることも可能なのかもしれません。私はベトナムで日本語教師をしていますが,狭く捉えれば,今ここにいるベトナムだけが「現場」になりますし,広く捉えれば,全世界が「現場」になるのだろうと考えながらインタビューを聞いていました。また,人と関わるところと捉えても,広く「現場」を考えることもできますし,狭くもなりえるとも思いました。「生きているすべてのもの」と関わることを想定しているのでれば,「現場」は広くなりそうですし,「仕事上で重要人物と関わっているところ」と想定すると「現場」は狭くなりそうです。個人的に,二名の方のインタビューをこのような「現場」の広さや狭さを考えながら聞いていました。

後半は参加者が事前に作成してきた「現場マップ」について,議論しあう時間を設けました。事前にご自身一人でふり返り,作成された「現場マップ」ですが,実際に他者に話す際には,すでに上記の二名の方のインタビューを聞いているわけですので,「現場」のイメージに変化があったかもしれません。あるいは自分自身がイメージして考えてきた「現場」が二名とは異なっていて,不安になられた方もいるかもしれません。研究集会委員も作成してきた「現場マップ」を持ち寄り,議論に参加したので,私も自分の「現場」について話しましたが,少し不安な気持ちにもなったものです。ある参加者からは「自分が考えてきたものが今回の趣旨に合っているかどうかわからない」,また異なるある参加者からは「自分には『現場』がないのがコンプレックス」のような声も聞かれました。もしかすると,「現場」というものは自分の中にあるものなので,それを他者に「さらけ出す」という気持ちになり,不安になることもあるのかもしれません。それでも話すうちに,また聞いてもらううちに,そして他の人の「現場」を聞くことによって,さまざまな視点で「現場」を捉えたり考えたりすることが可能であり,それがその人の個性を表すような気もしました(動態的なものだと思いますが…)。

クロージングの際に,委員長より「それぞれの現場の背後にある哲学や世界観,状況と,そこに埋め込まれている私たちって一体⁉」との問いかけがありましたが,今回のプレ企画では,その前段階の自分自身の現場を見つめ直すところまでできたものと思われます。12月の研究集会は,現場の背後にある哲学や世界観なども考えられる場になればいいのではないかと思います。

3.その他

参加者は少なかったですが,事前に「現場マップ」を作成してきていただきました。「場所」「人」「関係」「思い/想い」「キャプション」のパーツをご用意し,よりイメージしやすいように作成例も事前に掲示するようにしました。ただし,今回の趣旨が「現場を捉え直す」ことですので,影響されすぎないように最低限にとどめました。

また,二名の方のインタビューのうち,一名は時差の関係上,事前のインタビューで,プレ企画当日は動画を流しました。そのため,委員で現場マップを作成し,事前にインタビューした方へ確認しただいた上で,現場マップを見ながら動画を参加者に見ていただきました。もう一名は当日のLIVEインタビューでしたので,現場マップは作成せず,参加者にはインタビューを聞きながら,現場のイメージを考えていただくことになりました。

後半の参加者が事前に作成してきた「現場マップ」について,議論しあう時間では,Zoomのブレイクアウトルームに分かれて実施しました(ただし,今回は一つのルームのみで,複数の委員も議論に参加しました)。

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