言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

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第12回@ヴェネチア
講演「言語教育におけるメディエーションの意味」(細川英雄)ほか

どなたでも参加できます。ふるってご参加ください。

プログラム

14:00~14:10
開会・挨拶

第1部 講演

14:10~15:10
「言語教育におけるメディエーションの意味」
細川英雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科)

言語教育とアイデンティティの関係は,inter-culture(相互文化)におけるメディエーション(仲介)の概念と深いつながりのあることが指摘されている(ザラト,2005;Byram,2008)。メディエーションとは,すでに法律や医療の分野で盛んに使われている用語で,物事の仲介・調停などの意を表すが,教育,特に言語教育の分野ではまださほど一般的ではない。法律や医療においてこの概念が使用されるのは,複雑に絡んだ現実社会を当事者同士で解きほぐしていくために一定の仲介者が必要だからなのだが,教育世界においてもこの役割が求められているといえよう。なぜなら,教育実践活動それ自体が,決められたことを決められたように教える/覚えるという活動から,それぞれのアイデンティティに働きかけつつ,それぞれが自律的に学ぶ空間をどう創るかという方向に間違いなく動いているからである。

ここでは,さまざまな実践活動における,一人ひとりの価値観を伴う行為の交錯の中で,お互いにどのような活動が可能なのか,その活動によってどのような問題を解決するのかといった方向性を見出すことが求められており,そのために,メディエーションという概念がきわめて重要になるのである。相互文化的状況(複数の文化が交錯しあう状況)において,それらの文化の一つ一つの意味を確認したうえで,それらを仲介するメディエータの役割とその概念について考えなければならない。こうした状況を踏まえ,ここでは,複言語複文化状況下での日本語教育として,メディエーション概念とその意味について議論したい。

第2部 発表

15:20~15:40
「自分の居場所からありたい自分像を描いていく〈わたし〉の物語」
鄭京姫(早稲田大学大学院日本語教育研究科招聘研究員)

人は生活をしていく中で「居場所」を持つ。そして,その「居場所」で「居心地」の良さ,悪さを感じるのである。そのとき,「居心地」が良いと感じるときは,「そうありたい」自分を感じており,自分の存在意識を確かめられたとき,人はありたい自分像を描いていくことが物語より明らかになった。本発表では,一人の日本語学習者の「日本語人生」の物語より,自分の居場所からありたい自分像を描いていくことの意味を述べ,「居場所感」につながることばの教育のあり方を述べることを目的とする。

15:40~16:00
「交流の意味を捉え直す――留学生キキにとっての特別な人」
武藤理恵(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程2年)

本研究は,インドネシア人留学生キキにとって,日常生活でお弁当屋のおじいちゃん,おばあちゃんと交流することの意味を明らかにするものである。キキの語りから,交流するとはどういうことなのかを丁寧に描き,交流とは具体的な文脈を伴う,継続的なものであることが重要であり,結果的に行うことができるものであることを示す。そして,交流事業,交流イベントとされる時の交流との意味の異なりから,交流の意味を捉え直す。

16:00~16:20
質疑応答
16:30~16:50
「アクションリサーチによる教室外日本語学習環境整備の試み――留学生支援室における支援活動の質的変容を中心に」
古屋憲章(早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程)
黒田史彦(早稲田大学日本語教育研究センター)
守谷智美(早稲田大学日本語教育研究センター)

大学において,留学生の多様性と個別性に十分応えられる教室外日本語学習環境の構築が求められている。発表者らは,大学の留学生にとって最適な教室外日本語学習環境の整備を目的に,現在まで4学期(2011年度春学期~2012年度秋学期)にわたり,アクションリサーチを実施している。本発表では,日本語学習環境の整備のうち,留学生支援室の運営に焦点を当て,支援室における支援活動がどのように質的な変容を遂げていったかに関し,報告する。その上で,留学生支援のあり方に関し,提言する。

16:50~17:10
「欧米2大学の合同日本語授業を通してアイデンティティについて考える試み」
ナインドルフ会田真理矢(スウェーデン・ダーラナ大学)

本プロジェクトでは,米国・スウェーデン両国の大学をオンラインビデオ会議システムで繋ぎ,合同で日本語の授業を実施し,1学期間,学生間で「アイデンティティ」についての議論を行った。その結果に基づき,2カ国の外国人学生が日本語で意見交換することの意義を考察し,又,このディスカッションを通じて見られた学生たちのアイデンティティに対する考えの変化を検証する。

17:10~17:30
「総合活動型日本語教育における対話」
岡田みなみ(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程)
小山いずみ(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程)
平澤栄子(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程)
松島調(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程)
道端輝子(早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程)

私たち発表者は2012年度に早稲田大学における「総合活動型日本語教育」の授業に参加をした。そこで参加者との対話を通して「総合活動型日本語教育」の枠組みとそこでの活動について考えた。この体験を基に今回新たにヴェネツィアにおいて同じ理念に基づいた活動に参加することで,「総合活動型日本語教育」とは何かを捉え直したい。

17:30~18:00
質疑応答

参考:発表応募要領――終了しました

チラシ3月8日(金)イタリア・ベネティアにて第12回言語文化教育研究会を開催します。これにともない,当日の発表者を募集します。発表を希望される方は,発表タイトルと,発表要旨(1段落程度:書式自由)を,下記申し込み先までお送りください。

発表資格はありません。ふるってご応募ください。