第4号(2015年7月18日)
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言語文化教育研究学会メールマガジン 第4号
ALCE: Association for Language and Cultural Education
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■ 第4号:もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
--◆◇学会事務局より◇◆----------------------------------------------
ことばと文化の教育に関わる領域の交流をめざして
--◆◇会員からの一言◇◆----------------------------------------------
新会員となって 吉田孝子
--◆◇第32回月例会報告◇◆------------------------------------------
外国人犯罪者を生み出さないために日本語教育ができることは何か 山下克哉
--◆◇第2回研究集会in金沢報告◇◆----------------------------------
人類学・社会学からみたことばの教育 ― 言語教育における言語イデオロギー
を考える 佐藤慎司(研究集会実行委員)
--◆◇第2回研究集会in金沢 アンケート◇◆--------------------------
学会事務局集計
--◆◇おしらせ◇◆----------------------------------------------------
【参加者募集:7月31日】第34回月例会「インタビューにおける「語り」か
ら見えた聴き手と語り手の関係性の変容 ― かつての日本人が語った「わた
しの母国語」の意味の探求を手がかりに 佐藤貴仁氏
【参加者募集:8月】国際語としての日本語に関する国際シンポジウム(ブラ
ジル・サンパウロ)
【参加者募集:9月】特別企画ワークショップ「質的研究法 ― TEA(複線
経路等至性アプローチ)」
【参加者募集:9月】多言語の教師が集まって外国語の授業実践を考える研究
会外国語授業実践フォーラム:「協働学習」に基づく教室活動のデザイン―
体験から実践を考える
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■ 学会事務局より ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
ことばと文化の教育に関わる領域の交流をめざして
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今号は日本語教育に限らない、多方面の分野の方からの寄稿をいただくことが
できました。
先月行われた金沢での研究集会で交わされた学横断的な議論を活発に行ってい
けるように、今後もさまざな活動を企画・実施していきたいと思います。
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■ 会員からの一言 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
新会員となって
吉田孝子(横浜商科大学)
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今年度から本学会の会員となり、これまで2度の月例会と金沢で開催された研
究集会に参加しました。
英語教師である私にとって、日本語教育研究が多数を占める本学会の研究・実
践発表は一般的に言うと「畑違い」とみなすこともできるでしょう。しかし、
これまで拝聴させていただいた研究・実践発表の多くが(たとえ日本語教育研
究であれ、フランス語・ドイツ語・英語教育研究、さらには国語教育研究であ
れ)、言語学習を単に言語知識の蓄積ではなく、社会的・文化的な実践の場と
して捉えアプローチされていたように思います。言語の種類を超えて、「こと
ばを学び使う」ということはどういうことなのか、という共通する問いがあり
自分の教室実践を省察し考えを深める良い機会となりました。
特にわたしの興味・関心が向かっていた先は、学習者の社会的・文化的そして
歴史的背景に目を向けることでした。外国語教育の主要な目的の一つとしてコ
ミュニケーション能力の育成がありますが、教室空間ではコミュニケーション
の過程で「自分のこと」を他者に開示することが求められます。その他者がす
でに親しい友人であれ、授業の時間にしか会わないクラスメートであれ。この
傾向は研究集会で岐阜大学の仲潔さんが発表されたように、日本の現代の英語
教育では特に顕著で、学習者はコミュニケーションに対して積極的であること
が善しとされる、とのことでした。
わたしの授業実践を振り返ってみても、これには思い当たるふしがあります。
表現活動の時に学生たちのなんだか居心地の悪そうな雰囲気は、英語の知識・
表現のレパートリー不足の問題だけではなく、学生それぞれにとって伝えたく
ないこと・オープンにしたくないことに自己開示を強いていたのだと、気づき
ました。
ただ同時に、これは「個人の性格の問題」という方向へ安易に結論づけること
もできないでしょう。ひとりひとりの学習者は、学習者という一つのアイデン
ティティを超えて、社会的な存在であり、それぞれが様々なライフヒストリー
をもちよって教室という空間に集まっています。だとしたら、学習者の社会階
層や文化資産・社会資産が言語イデオロギーと密接に関わって、対象言語にた
いする学習者の態度が存在するのでは、という疑問も浮かびました。「伝えた
くない・オープンにしたくないコミュニケーション上の居心地の悪さ」は、例
えば、コスモポリタンなイメージがつきまとう英語で自分のことを表現するこ
とへの違和感に起因するのかもしれません。
また一方で、「紛争下における日本語教育の意義と課題」という秋田大学の市
嶋典子さんの発表では、学習者のおかれた政治的状況を考えると対象言語を学
ぶ意義がないように一般的には見えたとしても、学習者はその厳しい状況だか
らこそ対象言語に自分たちなりに希望を込めた意味を付与し、意欲的な学びへ
とつながる場合もありうる、ということも重要な視点だと思いました。
つまり、言語教育の意義や実践を考える時に、学習者の社会的・文化的または
歴史的背景は切り離せないもの、ということを本学会の発表を拝聴して再認識
することができました。また、司法という分野との接点や文学・演劇理論と言
語教育の融合など、本学会の発表から「ことばを使い学ぶことの意味・意義」
を多角的に考える機会をいただいております。今後も様々な分野との共同研究
発表を期待しております。
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■ 第32回月例会報告 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
外国人犯罪者を生み出さないために ― 日本語教育ができることは何か
山下克哉(早稲田大学大学院日本語教育研究科・行政書士)
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6月20日に、「刑事施設における日本語教育は誰のためのものなのか ― 外国
人受刑者に対する日本語教育の現状と課題」という題目の修士論文を提出しま
した。修士論文執筆の過程で、刑事施設における日本語教育の現場を視察し、
日本語教育担当者に対する聞き取り調査を行いました。そして、それを基にし
て外国人受刑者に対する日本語教育の現状と課題を明らかにしました。
しかし、刑事施設における日本語教育の実践に内在的に参画し、課題解決を目
指すことができたわけではありません。今後、本研究を継続していくに当たり、
刑事施設の職員との間に信頼関係を築くことができればいいなと思っています。
また、居住資格に該当する外国人受刑者は、概して、継続的な教育を受けた経
験がないので、基礎学力及び日本語能力が低いという特徴を持っており、仮に
引き続き日本に在留することができたとしても、就職や就学等の社会参加が困
難であるばかりでなく、再犯に至る可能性も高いという現実があります。従っ
て、刑事施設における日本語教育の在り方だけでなく、元受刑者のための社会
復帰支援策の1つとして日本語教育の在り方についても考えていく必要がある
と思っています。
今回、「外国人犯罪者を生み出さないために日本語教育ができることは何か」
という発題をさせていただきました。そうした発題に対し、「日本語教育の専
門性とは何か」、「むしろそれを乗り越えるべきではないか」、「行政書士の
仕事の中でことばの活動を行っていけばいいのではないか」、「NPO等をつ
くるというよりも、今できることを少しずつやっていけばいいのではないか」
等、貴重なご意見をいただきました。実際、私の同業者(行政書士)の中には、
英語、中国語、ポルトガル語等に堪能な者が集まり、日本に居住する外国人の
ために通訳として行政手続のお手伝いをしている者もおります。確かにそれは
重要なことなのですが、外国人の生活の各場面で言語に関する問題が生じたと
きに、いつでも通訳の手配ができるわけではありません。日本で生活する外国
人の方も、自分がより良い暮らしをするために、日本語で自分の意思を表明し、
他者の考えを理解しようと歩み寄ることが必要だと思っています。また、そう
した歩み寄りを支援する者も必要となるでしょう。
今現在も、規制薬物取締法違反で有罪判決(執行猶予中)を受け、退去強制手
続を執られている外国人の案件に関与していますが、当該外国人は永住者であ
るものの、日本語をほとんど理解できず、逮捕される前と同様に不良外国人
(有罪判決を受けて執行猶予中の者)と交際を続けています。今後も行政書士
の仕事の中で、このような負の環境から抜け出ることのできない外国人と出会
う機会が多々あるでしょうが、ことばの活動を通じて、彼らが自ら環境を変え
ようとする過程に関わることができればいいなと思っています。
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■ 第2回研究集会in金沢報告 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
人類学・社会学からみたことばの教育 ― 言語教育における言語イデオロギー
を考える
研究集会実行委員 佐藤慎司(プリンストン大学)
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6月21日(日)石川県政記念しいのき迎賓館において言語文化教育研究学会第
2回研究集会in金沢が開催されました。テーマは「人類学・社会学からみた
ことばの教育 ― 言語教育における言語イデオロギーを考える」で、学会会場
には90名もの方にご参加いただきました。また、プログラムは、パネルセッショ
ンのほか、口頭発表8件、ポスター発表9件という構成で、パネルセッション
では、パネリストの方々が「居場所のなさ」「マージナル(周縁)」といった
言葉をキーワードとして何度も用いられていた点は、私が考えるこの学会の意
義とも関係していて大変興味深いと感じました。
また、参加者の方のアンケートでは、他分野(とくに、今回のテーマにもあっ
た人類学と社会学)、異なるアプローチの方の話が聞けてよかった、「かぜ通
しがよく、緩やかなつながりと優しさのある学会」だったなど、肯定的な意見
も多く寄せられました。また、今後の課題としては時間の限られている口頭発
表やパネルで、議論をどう深めていけるか、どのようにもっと会場を巻き込ん
でいけるかなどがあげられ、今後どのように対応したらよいか考えていく必要
がありそうです。
今回の開催にあたっては金沢大学のボランティアスタッフの方には会場設営、
時間管理、懇親会など大変お世話になりました。最後にこの学会のために足を
お運びくださった発表者、参加者のみなさまにこの場を借りて篤く御礼申し上
げます。
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■ 第2回研究集会in金沢、アンケート ■□■□■□■□■□■□■□■
学会事務局集計
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回答数:30(会員12、非会員18)
*参加者の専門分野
・日本語教育: 19
・フランス語教育: 2
・外国語教育、社会学、社会言語学、言語社会学、日本文学・国語教育、第二
言語習得、会話分析、異文化理解・多文化社会における知識創造、特になし
:各1
*本研究集会の開催をどうやって知りましたか
・知人の紹介 13
・学会フェイスブックページ 6
・学会メーリングリスト 4
・学会ホームページ 3
・チラシ・ポスター 3
・その他 1
*本研究集会の満足度
満足 8
だいたい満足 14
ふつう 5
やや不満足 3
不満足 0
*感想
(会員向けMLでのみ公開)
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■ おしらせ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
━【参加者募集】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第34回月例会
インタビューにおける「語り」から見えた聴き手と語り手の関係性の変容
―かつての日本人が語った「わたしの母国語」の意味の探求を手がかりに―
発題者:佐藤貴仁氏(早稲田大学日本語教育研究センター)
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◆日時:2015年7月31日(金)18:00~19:40
◆場所:早稲田大学早稲田キャンパス22号館601教室
◆参加費:無料
◆予約:不要(当日、直接会場にお越しください)
◆お問い合わせ:monthly@alce.jp
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━【参加者募集】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
EJHIB 2015国際語としての日本語に関する国際シンポジウム
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◆日時:2015年8月9日~13日
◆場所:ブラジル・サンパウロ
松田真希子会員が実行委員長を務める「EJHIB 2015国際語としての日本語に関
する国際シンポジウム」(2015年8月9日~13日、ブラジル・サンパウロ)では、
ただ今、参加者を募集しております。
http://ejhib2015.com/
http://ejhib2015.com/japanese/program/
ご覧のとおり、非常に充実したプログラムとなっております。また、8/11
(火)には、佐藤慎司会員による基調講演も行われます。みなさま、奮ってご
参加ください。
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━【参加者募集】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
言語文化教育研究学会 月例会特別企画ワークショップ
質的研究法 ― TEA(複線経路等至性アプローチ)
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◆日時:9月5日(土)14:00~17:30(多少の延長あり)
◆場所:早稲田大学早稲田キャンパス22号館601教室
◆講師:荒川 歩 (武蔵野美術大学)
◆参加費:会員1,000円 非会員2,000円
◆定員:30名(先着順)
◆申込締切:8月10日(月)※定員に達し次第締切ります
◆申込方法詳細:https://alce.jp/monthly/index.html
◆申込先:monthly@alce.jp
◆参加費入金について:申込をされると同時に以下の口座に参加費の納入をお
願いします。
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━【参加者募集】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
多言語の教師が集まって外国語の授業実践を考える研究会
外国語授業実践フォーラム 第10回会合
「協働学習」に基づく教室活動のデザイン ― 体験から実践を考える
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◆概要:外国語授業実践フォーラム 第10回会合では、
外国語教育における「協働学習」をテーマにワークショップを開催します。
このワークショップは、協働やピア・ラーニングを研究・実践されている
金孝卿(キム・ヒョギョン)先生(大阪大学)をお招きし、
参加者の皆様と共に協働学習を体験し、今後の授業実践について考えることを
目的とします。皆様のご参加、心よりお待ちしております。
◆日時:平成27年9月13日(日曜日)12時30分(受付開始12:00)
※16:30閉会予定
◆参加費:2,000円(資料代含む)
※定員:25名(定員になりましたら、締め切らせていただきます)
※外国語授業実践フォーラム2015年度年会費(4000円)を払われた方は無
料です。
◆場所:東京外国語大学 本郷サテライト 4階 セミナールーム
http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html
◆交通: 地下鉄(丸ノ内線・大江戸線)「本郷三丁目」駅下車 徒歩5分
JR中央線・総武線「御茶ノ水」駅下車 徒歩10分
◆参加申込:参加を希望される方は、下の参加申込の内容を記入の上、
gaikokugozyugyou@hotmail.com(外国語授業実践フォーラム事務局)まで
ご連絡ください。
1.所属:
2.お名前:
3.お名前(ふりがな):
4.担当言語:
5.第一言語:
6.当研究会のメーリングリストへの追加:可/不可
(すでに当研究会MLに参加されている方は結構です)
7.懇親会参加:希望する・希望しない
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誌 名:言語文化教育研究学会メールマガジン 第4号
発行日:2015年7月18日
発行所:言語文化教育研究学会 事務局
〒187-8505 東京都小平市小川町1-736
武蔵野美術大学鷹の台キャンパス三代純平研究室内
編集、発行責任者: 言語文化教育研究学会広報・連携委員会 松井孝浩
お問い合わせ・情報掲載依頼:ezine@alce.jp
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