言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

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第9号(2016年6月30日)

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言語文化教育研究学会メールマガジン 第9号
ALCE: Association for Language and Cultural Education

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■ 第9号:もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
--◆◇学会事務局より◇◆----------------------------------------------
月例会、話題提供者/発表者&参加者募集および会員企画募集について

--◆◇月例会報告(1)【1月23日(土)開催】◇◆-----------------------
「魔法使いの子どもの修行の旅―外国にルーツを持つ親子を支援する日本語と
演劇のワークショップ」感想                 稲垣みどり

--◆◇月例会報告(2)【2月26日(金)開催】◇◆----------------------
「自分のライフストーリーを解釈する:語学教師のための意義と方法」報告
                               佐藤正則

--◆◇おしらせ◇◆----------------------------------------------------
【参加者募集:7月9日】特別企画「言語教育を生態学的に考える」宇都宮裕章
  さん(静岡大学),齋藤智美さん(早稲田大学)[2016-06-17]
【参加者募集:7月16,17日@香港】第3回研究集会:言語教育の「商品化」と
  「消費」を考えるシンポジウム
【全文公開中】『言語文化教育研究学会 第2回研究集会in金沢 報告集』
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◆◇学会事務局より◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
月例会での話題提供者/発表者&参加者募集、会員企画募集について
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言語文化教育研究学会では、今年度の定例の月例会での話題提供者/発表者&
参加者、会員企画を募集しています。

会員のみなさまの積極的な応募を歓迎します。広く言語文化教育に関係する内
容であれば,どのような内容でもかまいません。学会事務局では、会員の皆様
と協働で開かれた議論の場を創っていきたいと考えております。

詳細についてはこちらをご覧ください。

https://alce.jp/projects.html#n01

今年度もどうぞよろしくお願いいたします。
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◆◇月例会報告(1)【1月23日(土)実施】◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「魔法使いの子どもの修行の旅―外国にルーツを持つ親子を支援する日本語と
演劇のワークショップ」感想
                              稲垣みどり
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今回のワークショップは子連れ参加歓迎とのことだったので、小1(7歳)と
小3(9歳)の子ども連れで午前中の実践編に参加した。午後の理論編は私1
人で参加した。子ども達は外国にルーツを持ち、複数言語環境で育っているの
で、ワークショップを子どもがどのように受け止めるのかという興味もあった。

まず中山さんの主導でウォーミングアップがあり、参加者の殆どが初対面なの
に、ニックネームを呼びつつ体を動かしてウォーミングアップをするうちに、
自然にお互いに親しみが湧いて、どんな人なのか所属と肩書きがなくても動作
で分かる、という絶妙なスタートで始まった。

続いて飛田さん、中山さんのお2人の主導で、演劇のワークショップが場面ご
とに展開されていった。ワークショップ後半ではグループに分かれて「魔法使
いの子ども」役と家族の役も決め、「魔法使いの子」の旅立ちの場面を演じる。
また「魔法使いの子」がよその地に来た場面で、地元の子と「魔法使いの子」
のやりとりを演じる。こうして次第に場面ごとのワークショップは1つのプロ
ットを持つ物語「魔法使いの子どもの修行の旅」であることが明らかなった。

「外国にルーツを持つ子ども」を「魔法使いの子ども」になぞらえ、その子ど
もの「修行の旅」をめぐる物語に演者として参加していく過程が、外国にルー
ツを持つ子どものいる日本の社会に生きる自分が、どのような場面でどのよう
な言葉を発し、どのような行動をとり得るか、への問いかけであることが、ワ
ークショップに参加しつつ了解される、という凝った仕掛けであった。

午後の理論編では中山さん、飛田さんによるワークショップ実践の理論的背景
の説明もあり、「やりっぱなし」でなく議論し、考察をめぐらす時間も十分あ
ってよかった。特に中山さんの、外国につながる子ども達をめぐる言語の問題、
社会的文脈の提示が、本ワークショップの実践の目的を理解する助けとなった。

演じながら「こんな時、自分ならどうする(どう言う)?」と考え、また演じ
た後に「なぜ自分は(他の人は)はそう演じたか?その言葉を発したか?」と
振り返ること、それがこのワークショップの狙いとする活動だったように思う。

我が子らはワークショップ中、出たり入ったりを繰り返す落ち着きの無さだっ
たが、外に出ている時には主催者側が丁寧に面倒を見て下さった。そんな気ま
ぐれな子ども達も、ワークショップ中は魔法使いの子ども役になって衣装作り
をする等、彼らなりに参加を楽しんでいた。

ワークショップ参加後に分かったことだが、実は私は2007年にロンドンで飛田
さんの創った舞台を観ていたのだった。その年私はロンドン大学のシンポジウ
ムに参加し、友人に誘われてロンドンの小劇場に芝居を観に行った。英国の若
い俳優たちによって英語で上演される『銀河鉄道の夜』。ジョバンニとカンパ
ネルラの切ない物語が、英語によってロンドンの劇場に紡がれ、賢治のみずみ
ずしい抒情にみちたひとつの世界が、そこには確かに創り出されていた。『銀
河鉄道の夜』から『魔法使いの子どもの修行の旅』まで、8年の時間を経て期
せずして同じ作り手の演劇体験に参加することができたのは、私にとっては嬉
しい偶然だった。

演劇空間は演者の発する言葉と身体の行為によって作られ、現実世界もアクタ
ーたる社会行為者が発する言葉と身体の所作によって創られる。今回の演劇ワ
ークショップは、演じる体験を通して、我々1人1人がリアルな社会のアクター
であること、発することばと身体の動きに自覚的であらねばならぬことへの気
付きをもたらす見事な実践であったと感じた。
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◆◇月例会報告(2)【2月26日(金)実施】◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「自分のライフストーリーを解釈する:語学教師のための意義と方法」報告
                               佐藤正則
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2月26日に、ジュヌヴィエーヴ・ザラト氏(INALCO名誉教授)を講師に迎え、
「自分のライフストーリーを解釈する:語学教師のための意義と方法」という
タイトルでワークショップが開催されました。今回はフランス語教育関係者10
人、言語教育研究学会10人限定という小規模のワークショップでしたが、会員
の興味関心も高く、広報を始めて一時間足らずで申込締め切りとなるほどでし
た。

ワークショップでは、まず、ヨーロッパの言語教育分野における「ライフスト
ーリー」への関心の動向・レファレンス等が紹介された後、4人程度のグルー
プになり、ザラト氏の用意した「サラのバイオグラフィ」を読み、「話す言語
数」「家族から受け継いだ言語、そうでない言語」「教育制度で習得した言語、
学校外で習得した言語」「移動の経験」「言語能力の専門化」という視点で解
釈していきました。

最後に、グループ毎に発表し、ザラト氏を中心に、全体討論の形で解釈を更に
深めていきました。参加者は他者のバイオグラフィを参照しながらも、自分の
ライフストーリーを書き解釈することの意味を各自考えることができたのでは
ないかと思います。

今回のワークショップは、大東文化大学の姫田麻利子科研、京都大学の大木充
科研(京都大学)との共催により実現しました。フランス語教育、日本語教育、
英語教育の関係者が集い、語学教師が自己や他者のライフストーリーを共に考
える場となりました。
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◆◇おしらせ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
━【参加者募集:7月9日】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
特別企画「言語教育を生態学的に考える」
宇都宮裕章さん(静岡大学),齋藤智美さん(早稲田大学)
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日時: 2016年7月9日(土)16:00〜18:00
会場: 早稲田大学早稲田キャンパス 22号館619教室
参加費: 無料
予約: 不要(当日,直接会場にお越しください。)
お問い合わせ: monthly@alce.jp(月例会委員会事務局)
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本特別企画では,まず,齋藤さんが,自身が日本語教育実践を行う中でどの
ような違和感を覚えたか,その違和感に基づき,どのような実践を行ったか
を語ります。次に,齋藤さんと宇都宮さんが,齋藤さんが行った実践を題材
に,生態学的な観点で捉えることにより,言語教育実践がどのように変わっ
ていくか等に関し,語り合います。それらの語りを踏まえ,参加者全員で言
語教育を生態学的な観点で捉えることの可能性を議論します。



━【参加者募集:7月16,17日@香港】━━━━━━━━━━━━━━━━━
第3回研究集会:言語教育の「商品化」と「消費」を考えるシンポジウム
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日程: 2016年7月16日(土),17日(日)
会場: 香港大学
参加方法: 事前参加申込受付中(割引があります)
詳細情報: 研究集会特設サイト
(https://sites.google.com/site/researchseminar03/)
合同開催: 言語文化教育研究学会,つながろうねっト,
      香港大学日本研究学科日本語プログラム(順不同)
お問い合わせ: meeting@alce.jp(言語文化教育研究学会研究集会事務局)
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開催趣旨——商品化と消費って?

私たちは,「商品化」を〈ある物や活動が経済的行為と結びつき,価値を持つ
ようになること〉,「消費」を〈人々が商品化された物や活動に対価を支払い,
手に入れ,欲望充実やアイデンティティ構築のために費やすこと〉と定義しま
す。

言語教育と経済的行為は切っても切れない関係にあるにもかかわらず,これま
で議論が避けられがちだったのではないでしょうか。私たちは香港での研究集
会で「言語教育の商品化と消費」について向き合い議論したいと考えています。
みなさまのご参加,お待ちしております。

プログラムより

7月16日(土)
基調講演1(12:50〜13:50)
久保田竜子(ブリティッシュコロンビア大学)
「消費としての学び——言語学習のフレームを問い直す」

特定課題セッション(14:00〜17:20)
ロズリン・アップルビー(シドニー工科大学)
「日本の英会話学校における白人西洋男性の商品化と消費」
ハキューン・リー(ジョージア州立大学)
「“私達は永遠の英語学習者”——年配ESL学習者の余暇活動としての英語学習」
陶堅,大友瑠璃子(香港大学)
「民間英語学校教師のアイデンティティの複雑性——ある日本人教師のケース」
ギャヴィン・フルカワ(東京大学)
「コードの曖昧性と日本のテレビにおける英語の商品化」

特別セッション(17:30〜18:30)
笈川幸司
「効果的な発音指導と学習者の話す力を引き上げる授業」

7月17日(日)
基調講演2(10:00〜11:00)
神吉宇一(武蔵野大学)
「市場化の進む世界における日本語教育のあり方——『語学』から『教育』へ」



━【全文公開中】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『言語文化教育研究学会 第2回研究集会in金沢 報告集』
テーマ:人類学・社会学からみたことばの教育 — 言語教育における言語イデ
オロギーを考える
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報告集を公開しています。
https://alce.jp/meeting/past.html#p02b



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誌 名: 言語文化教育研究学会メールマガジン 第9号
発行日: 2016年6月30日
発行所: 言語文化教育研究学会 事務局
     〒187−8505 東京都小平市小川町1−736
     武蔵野美術大学鷹の台キャンパス三代純平研究室内
編集,発行責任者: 言語文化教育研究学会広報・連携委員会 松井孝浩
お問い合わせ・情報掲載依頼: ezine@alce.jp
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