言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

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2025年度 例会

【第102回:5月10日】「年齢」から言語教育を問い直す日本語教育とエイジズム、年齢性との関連から

話題提供者
吉井雄樹さん(関西学院大学大学院)

日本語学習者とは「何歳」でしょうか。「人種」やエスニシティ、ジェンダーの視点から言語教育を問い直す試みがみられるようになりました。一方で、「年齢」の視点から問い直されることはあまりなかったのではないでしょうか。数少ない先例には、「『あの子』問題」として問題提起されたものがあります(古屋,2025[2012]);つながろうねっト(有森ほか),2013;勝部,加藤,2024)。この議論のなかでは、成人学習者を「子ども」扱いしたり、逆に自分より年上の学習者を「おっさん/おばさん」扱いしたりすることに対して意見が交換されています(つながろうねっト(有森ほか),2013)。このような年齢に基づく関係性は、固定的な「教師‐学生」関係につながることも考えられます。そのため、「日本語学習者を社会的な存在として捉える」言語教育観(文化審議会国語分科会,2021)を本来の意味で達成するための障壁になることも考えられます。

そこで、本例会では、日本語教育を事例に「年齢」の視点から言語教育に対して問題提起を行い、みなさんと一緒に批判的に内省し、今後の言語教育を考える機会を提供したいと考えています。一歩立ち止まって考えてみると、「年齢」には“不思議なこと”がたくさんあります。それは社会のなかで何らかの「常識的な」想定があり、それが年齢に関連する矛盾を見えなくするためだと思います。そのような「常識的な」想定を一緒に見つめ直し、言語教育の実践を見直す機会にできればと思います。具体的には、次のような2つの活動から成るワークショップを考えています。

  1. 久保田(2008)の4Dアプローチを参考に、(1) 記述的、(2) 多様的、(3) 流動的、(4)言説的な年齢の側面に着目した活動(吉井,2024;岡本ほか,2024)
  2. 1.を踏まえて日本語教科書の記述について再考する活動

「年齢」に関連する「常識」にはどのようなものがありますか? それが言語教育にどのように影響するでしょうか? 本企画では、主な事例を日本語教育の文脈から示しますが、広く言語教育を「年齢」の視点から一緒に考えてみたいと思います。

参考文献

  • 岡本舞夏,金侑蘭,吉井雄樹(2024).『言語教育で「年齢らしさ」をどのように扱うことができるのか韓国の日本語学習者と教師との話し合いから考えたこと【韓国】』日本語教育学会2023年度グローバル人材奨励プログラム.https://www.nkg.or.jp/musubu/contents/kaigai/20240520_2698780.html
  • 勝部三奈子,加藤林太郎(2024).「あの子」問題を再考する「子」の使用による相互行為達成の視点から『言語文化教育研究学会第10回年次大会「言語文化教育研究とは何か」予稿集』(pp. 92-97).https://alce.jp/annual/2023/proc.pdf
  • 久保田竜子(2008).日本文化を批判的に教える.佐藤慎司,ドーア根理子(編)『文化、ことば、教育日本語/日本の教育の『標準』を越えて』(pp. 151-173)明石書店.
  • つながろうねっト(有森丈太郎,青山玲二郎,佐野香織,瀬尾匡輝,山口悠希子,米本和弘)(2013).「あの子」問題から「教師‐学習者」の関係について考える『言語文化教育研究会2013年度研究集会大会「実践研究の新しい地平」予稿集』(pp. 2-9).https://alce.jp/dat/proc2013/01arimori.pdf
  • 古屋憲章(2025年1月5日).「【再掲】「あの子」問題」『Note』https://note.com/furuyanoriaki/n/nac520eb62197.(原典2012年)
  • 文化審議会国語分科会(2021).「日本語教育の参照枠 報告」.https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93476801_01.pdf
  • 吉井雄樹(2024).年齢の多様性を理解する活動の試案プロジェクト学習における教室活動を事例に『日本語教育方法研究会誌』30(2),24-25.https://doi.org/10.19022/jlem.30.2_24

【第101回:4月25日】共生社会で見える風景とは?多様な人どうしの関わり方を考える

話題提供者
倉沢 郁子さん(関西外国語大学)
ゲスト
中岡豪さん(Community & Coworking HOOP! 代表)

日本語教育において「共生社会」に向けた教育実践が多く行われています。

わたしたちはどのような「共生」をイメージして、教育実践をしているのでしょうか。どうあれば「共生」なのでしょうか。そして、その向かう先はどこなのでしょうか。

本例会では、まず話題提供者(倉沢)が勤務校の上級日本語クラスで実施している地域連携プロジェクトについて、プロジェクトの共同パートナーである中岡豪さんとともに話題提供します。その中で、わたしたちがプロジェクトを始める時にイメージしていた「共生」のあり方、また現在の状況をそれぞれの視点から報告します。

その後、参加者のみなさんがイメージする「共生」とはどういうものかをグループで話してもらい、最後に全体共有する時間としたいと思います。本企画が参加者のみなさんにとって「共生のあり方」をあらためて考える場となればと考えています。