言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

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第10号(2016年7月16日)

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言語文化教育研究学会メールマガジン 第10号
ALCE:Association for Language and Cultural Education

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■ 第10号:もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
--◆◇学会事務局より◇◆----------------------------------------------
月例会,話題提供者/発表者&参加者募集および会員企画募集について

--◆◇【3月22日(金)開催】第2回年次大会報告◇◆------------------
第2回年次大会開催報告                    田中祐輔
第2回年次大会シンポジウム報告                神吉宇一

--◆◇【4月22日(金)開催】第41回月例会報告◇◆------------------
「日本語習得過程におけるネットワーク形成と社会参加
―在日インド人ビジネスパーソンの事例から―」報告       鈴木真奈

--◆◇【5月28日(土)開催】第42回月例会報告◇◆------------------
「ことばは誰のものなのか―日本思想の観点から考えた言語教育―」報告
                           ロマン・パシュカ

--◆◇【6月25日(土)開催】第43回月例会報告◇◆------------------
「久保田竜子『グローバル化社会と言語教育』を読む
―言語教育の「商品化」と「消費」を考えるシンポジウム
(第3回研究集会 IN 香港)プレ企画―」報告          古屋憲章

--◆◇おしらせ◇◆----------------------------------------------------
【参加者募集:7月16,17日@香港】第3回研究集会
        「言語教育の「商品化」と「消費」を考えるシンポジウム」
【参加者募集:7月23日】第44回月例会
   「日系カナダ人はいかにしてカナダ市民となったのか―多文化主義への
   移行期における市民運動から探る―」
   秋山幸さん(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
【全文公開中】『言語文化教育研究学会 第2回研究集会in金沢 報告集』
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◆◇学会事務局より◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
第3回研究集会「言語教育の「商品化」と「消費」を考えるシンポジウム」
が開催されます。
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いよいよこの週末に第3回研究集会「言語教育の「商品化」と「消費」を考え
るシンポジウム」が開催されます。

開催地が香港ということもあって,参加できない方もいらっしゃるかもしれま
せんが,本メルマガでもシンポの様子をお伝えしていきますので,ぜひご期待
ください。

また,引き続き,今回のシンポを受けての企画を含めた新企画を募集しており
ますので,ぜひ事務局まで応募ください。

世界では,「我々」とは異なる「彼らに」対する不寛容を根源とする様々な事
件が続いています。

「我々」を想定し,成立させていくためには,やはり「彼ら」の存在を対置す
ることが不可欠なのでしょうか。そうだとしたら,私たちは,このような「我
々」をどのように乗り越えていくことができるのか。

その中で,ごく一部の「我々」の利益や価値観の絶対化を追求するために,
「彼ら」はどのように世界に組み込まれ,そして,消費されていくのか。

そして,言語は,このような「我々」と「彼ら」分かつときに用いられる最も
基本的な(あるいは便利な)ツールの一つであると考えることもできます。

このような世界の中で,私たちは,どのように「ことばの教育」を捉え,何を
めざし,どのような実践を行っていけばよいのでしょうか。

みなさまからの企画をお待ちしています。
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◆◇【3月22日(金)開催】第2回年次大会報告◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
第2回年次大会開催報告
                 田中祐輔(年次大会実行委員会委員長)
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言語文化教育研究学会第2回年次大会が,3月12日(土)・13日(日)に
武蔵野美術大学小平キャンパスにて開催されました。177名の方々にご来場
いただき,大盛況のうちに終了しましたことを以下にご報告いたします。

今大会の発表数は,口頭発表20件,ポスター発表12件,フォーラム4件,
そして,シンポジウム2件,となりました。他分野・多領域にわたる研究発表
が行われ,英語教育や日本語教育,学校教育,留学生教育,といったさまざま
な場面での言葉と教育の実践研究について非常に深い議論が交わされていたも
のと感じます。

ここに,今大会にご参加いただいた方々よりお寄せいただきました感想の一部
を掲載させていただきます。

・口頭発表,ポスター,シンポジウム,様々な形でテーマについて考えること
 ができ,とても有意義でした。パネルも異なる立場の3名の話がバランスよ
 くきけて,咬み合っており,参考になりました。

・全体的に質疑応答,ディスカッションの内容が濃く,自分の研究や実践に関
 わる議論が聞けて/参加できてよかったです。

・本当に“面白い”会でした。なぜこんなに面白かったかを考えると,多文化
 共生という重いテーマで,色々と言葉にできない思いがあった中で,パネル
 や発表を聞くことで,テーマに対する希望が見出だせたからかもしれません。
 今後も参加を通じて小さな希望が見出されるような学会を楽しみにしており
 ます。

・予稿集では2時間ずっとポスター発表をしているようなタイムスケジュール
 で掲載されていたが,実際には前半,後半で分かれていた。それを知らずに
 後半に行ったため,発表者がいない状態でポスターに見ることになってしま
 い,残念だった。前半,後半がどういう区分になっているのかを予稿集にも
 載せてほしい。

・さまざまな切り口で「多文化」とか「共生」を考えられた2日間でした。新
 しい考え方に出会ったことがおみやげです。2つのシンポジウム,フォーラ
 ムがとてもよかったです。自分自身の「多文化」に対する考え方が狭かった
 な…と気付かされました。で,どうするか?が,暗いままですけど。月例会
 などで,「で,どうする?会」があればうれしいと思います!実行委員のみ
 なさん,ありがとうございました!!

・2日間に亘る大規模な大会だったが,大変興味深い発表が多く,考えること,
 得るものが盛りだくさんであった。引き続き考えていけるような場があれば
 とてもよいと思う。

・問題意識を共有する方たちと多文化共生について語りあうことができ,とて
 も充実していました。ありがとうございました。

※以上,メルマガでのシェアに関する掲載許諾をいただいたものからの抜粋。

今大会では新しい取り組みとしまして,二日間開催といたしました。これは,
会員の皆様よりご要望いただきました発表枠の拡大や日程的にゆとりある大会
運営を実現するために行われたもので,開催校の三代純平さんをはじめとする
教職員の皆様やアルバイトスタッフの方々にご対応いただく形で実現いたしま
した。非常に丁寧な準備と運営を行っていただきましたこと改めましてお礼申
し上げます。

シンポジウムにおいて,佐藤慎司さんが「ネットワークづくりと自己反省の場
の提供」とおっしゃっていらっしゃいましたが,ある意味では,本学会におけ
る年次大会もまた,そうした議論とネットワーク構築の一つの具体的な場とな
るのではと感じております。本大会における議論が,会員の皆様の今後の研究
と実践に広く展開し,ますますの発展へとつながることを心より祈念いたしま
す。
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◆◇第2回年次大会シンポジウム報告◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
神吉宇一(第2回年次大会シンポジウムコーディネーター)
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なにをやろうとしたか

年次大会のテーマを考え,メインのパネルディスカッションをやって欲しいと
依頼されたのは,大会の約1年前だったと記憶しています。

当時,依頼してきた学会関係者も,私や慎司さんも,日本各地で頻発するヘイ
トスピーチへの違和感と怒りがありました。また,それに付随する「異質なも
のへの忌避」が社会全体に広がることへの危機感,そして寛容性と共感力のな
い,差別が正当化される社会がつくり出されていくのではないかという,結構
マジな不安と怖れがありました(今もあります)。

私たちは,ことばや文化を扱い,国境を越えて移動する人たちに関わる仕事で
糊口をしのいでいます。そういう私たち自身の社会的役割を考えたときに,ヘ
イトスピーチがまかり通る社会に対して具体的な行動を起こさなければならな
いのではないかと考えました。

私自身のことに引きつけて言うとすれば,私自身が,若かりし頃,現在のヘイ
トスピーチと何ら変わりのないようなことをしていたという事実があります
(そのことについてはシンポジウムの冒頭でもお話ししました)。様々な経験
を経て,ある意味で「転向」しましたが,そのような過去を自分自身で整理す
ることも含め,何かやる必要があると考えていました。

テーマを掲げるに当たって,私たちが重視したのは,どれだけ多くのひとに集
ってもらえるか,どれだけの人を,ヘイトスピーチがまかり通るようなこの社
会を変えるための議論に巻き込めるかということでした。

私は(おそらく慎司さんも),理念や理想や正論はもちろん必要だと考えてい
ますが,それをいくら声高に叫んでも,一緒に行動してくれる仲間がいないと,
物事がなかなか進んでいかないと考えています。

ですから,どうやったら人々が集まってくるかという観点から,まずは問題意
識を整理しました。そして,ストレートに「ヘイトスピーチ反対」を掲げたと
しても,そのことに興味関心のある,ある意味同質的な人たちしか集まらない
のではないかとの結論に至り,比較的幅広に共感を得やすい「多文化共生」を
テーマとすることにしました。

当然のことながら,「多文化共生」に対する批判的な意見もあることを承知の
上で,その文言を使用したというのが,本大会のテーマ決定の経緯です。テー
マ決定後には,登壇者を誰にお願いするかという作業をしなければなりません
でした。登壇者の選定については,より多様な観点からの議論を行うことを念
頭に,以下のような方針を立てました。

パネル1:
教育実践や研究という分野にこだわらず,さまざまな切り口で「多文化共生」
に関する取り組みを行っている人

パネル2:
研究者の中で,日本語教育や言語教育にこだわらず,さまざまな分野で「多文
化共生」に関する取り組みを行っている人

当然ですが,いずれのパネルに関しても,登壇者の活動が広い意味での教育・
言語教育と繋がりがあることは重要なポイントとして考えていました。

なにをやったか

シンポジウムを行うに当たって,その準備をどうするかについても考えを巡ら
せました。個人的な経験則の範囲内ですが,シンポや講演などがうまくいかな
い場合の企画側の問題というのは,だいたい「丸投げ型」「アンバランス型」
「燃え尽き型」の三つに分けられると思っています。

「丸投げ型」とは,テーマを決めるだけで,あとは登壇者に「どうぞこのテー
マで好きにしゃべってください」というもので,巷では比較的多いパターンだ
と思います。

「アンバランス型」とは,登壇者同士に知識や情報の差があったり,本質的な
部分での問題意識がずれていたりする場合です。話がかみ合わず,しかも表面
的な話で終わってしまいます。

「燃え尽き型」というのは,事前に入念に準備し,一堂に会して打ち合わせを
することで,打ち合わせが想像以上に盛り上がってしまい,当日に話すことが
なくなってしまうような場合です。

「丸投げ型」を回避するためにがんばった結果,「燃え尽き型」になってしま
ったというのは,誰しもが一度は通る道ではないかと思います。今回は,この
三つを回避することを念頭に,具体的にどんなことをお願いしたいかを具体化
し,「多文化共生」という切り口からの問題意識を共有でき,かつ,一堂に会
しての事前の対面の打ち合わせは行わず,必要な場合は司会・コーディネーター
が個別に入念にやり取りをするという方法をとりました。

では,肝心の当日はどうだったかということですが,司会・コーディネーター
をやらせてもらった関係で,それぞれの登壇者のお話をどうさばいていくかと
いうことに集中していたこともあって,すごく疲れたけどすごくおもしろかっ
たというのが,今でも残っている印象です。

また,「ことばの教育として,今回テーマとしたようなことを考えていかなけ
ればならないと改めて考えた」といった感想ももらいました。私自身も,登壇
者がみなさんリクツの話だけでなく,実際に取り組んでいる具体的な実践を含
めてお話をいただけたことで,いろいろと考えるきっかけを与えてもらいまし
た。

やってみてどうだったか

最後に,やってみてどうだったかを振り返ってみたいと思います。すでに書い
たように,とても刺激的でおもしろいシンポができたと思います。

ただ一方で,そもそもの問題意識に,私たちはどこまで迫っていけたのだろう
かという反省というか疑問が大きく残っています。今回のシンポを企画した社
会的な問題意識に果たして迫れたのか,単に「おもしろいシンポだった」で終
わらせてしまっているのではないか,そこが私自身の反省であり,「次」への
動機付けとなっています。
シンポで話しっぱなしをやめ,これをどこかに書くということをやりたいと思
っています。また,書きっぱなしではなく,書いたことを踏まえて実践に取り
組んでいきたいと思っています。

そして,やりっぱなしではなく,取り組んだことをさらに発信し,仲間を増や
していくような活動につなげていきたいと思っています。当日参加された方,
また参加されなかったけれど,この「感想文」を読んだ方。ぜひ,問題意識を
共有して,よりよい社会を創るために,教育・ことばの教育に何ができるのか,
引き続き一緒に考えていきましょう。

「多文化共生社会の実現」が主張されて,すでに長い時間が経っています。で
すが,その社会が実現される気配どころか,むしろ状況は悪くなっているので
はないかと改めて感じます。この現実に向き合い,諦めずに進んで行く必要が
あることを,今強く感じています。
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◆◇【4月22日(金)開催】第41回月例会報告◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「日本語習得過程におけるネットワーク形成と社会参加
―在日インド人ビジネスパーソンの事例から―」報告
                 鈴木真奈(鈴木日本語アカデミー代表)
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4月の月例会で,昨年提出した修士論文を発表する機会をいただきました。

テーマは,「日本語習得過程におけるネットワーク形成と社会参加―在日イン
ド人ビジネスパーソンの事例から―」です。研究内容を一言で言うと,「日本
語学校で学んだ経験のない日本語学習者の,習得プロセスについての質的研究」
です。

日本社会の第一線で活躍している4名のビジネスパーソンを対象に,彼らがこ
れまでどのような日本語経験をし,周囲とどのような関係を築きながら社会参
加を果たしたのか,その過程について研究しました。

4名に共通していたのは,経済的要因,あるいは物理的要因によって日本語学
校に通えない環境にあったという点です。例えば,職場が郊外にあり日本語学
校にアクセスしづらい,週末出勤も多く学校に通う時間的余裕がない,今ほど
ネットのリソースも充実していなかった,などです。

そのため,それぞれの現場・業界に特化した中心的な語彙からの日本語習得が
特徴的です。また,周囲の日本人をうまく学習に巻きこみ,日本語学習のチュー
ター役に仕立て上げるなど,学習環境作りに長けていることもわかりました。

こうした環境の中で,自ら異文化に飛び込み,調整・適応する能力を身に着け,
言語面・言語行動面双方をバランスよく習得していたこともわかりました。

発表を終えてからのディスカッションの時間では,「社会参加」について話題
が及び,「社会参加とは何か,どのようなイメージか」「社会参加の基準は何
か,誰が判断するのか」「社会参加とは日本人のようになることなのか」といっ
たご意見をいただきました。

全ての質問に正しい答えがあるとは思いませんが,私自身は,仕事を通じて対
価を得て,独立した生計を営むことが社会参加だと,ざっくりと考えています。
ですから,社会参加をしているか否かの判断基準は明確です。ただ,こうした
質問を受けて,一人一人にとっての社会参加が何を指すのか,そこに言葉がど
のように介在するのか,それぞれの日本語人生の向き合い方を,より深く探る
ことも重要ではないかと気付きました。

また,こうした事例を外国人の言語習得の問題として語ることの限界も感じま
した。なぜなら,ビジネス目的で来日している彼らにとって,日本語学習は仕
事を通じて得た副産物に過ぎないからです。実際,4名のインタビュー調査で
は,言語の問題からは超越した,日本社会への貢献,今後の人生の課題・目標
について多く語られていたのも事実です。

今回発表したテーマは,一見,日本語教育から外れるテーマに思えますが,外
国人と関わる機会が多くなる私達日本人にとっては身近な問題ではないでしょ
うか。こうした学習者も日本語教育の範疇にいれ,私達がこれからどのように
向きあうべきなのか,受け入れる日本人側の発展課題として考えていきたいと
思います。

今後も真摯に研究活動を続け,実践に生かしていきたいと思っています。あり
がとうございました。
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◆◇【5月28日(土)開催】第42回月例会報告◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ことばは誰のものなのか―日本思想の観点から考えた言語教育―」報告
              ロマン・パシュカ(神田外語大学日本研究所)
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第42回月例会にて,「ことばは誰のものなのか―日本思想の観点から考えた
言語教育」というタイトルで発表を行いました。

まず,私はなぜこのようなタイトルで発表をすることになったかについて説明
しました。教師兼研究者といった二面性を持っている者として,言語教育の実
践をしながら,日本思想の分野で研究活動を続けていますが,そんな中で葛藤
を覚えたり疑問を抱いたり不安を感じたりすることが,しばしばあります。

教育実践と研究は異なるものなのか,それとも両分野を貫いている赤い糸のよ
うなものがあるのか,日本語や英語を教えることと安藤昌益の哲学について考
えることがリンクしているのかなどと,そういった疑問や不安です。

そこで,今回の月例会でそんな疑問や不安を他者にぶつけることにしました。

簡単に言いますと,悩みを1人で抱えるのではなく,他者と対話・相談するこ
とで新しいパースペクティヴを得る,ということです。

安藤昌益は,世の中について「私法世」と「自然の世」と,大きく二つに分け
て論じています。「私法世」とは,支配者が作り出した「法」の下で封建制度
そのものが存在する現実社会のことであり,「自然の世」とは平等な,自然と
共生する理想の社会のことです。

そして,寓話や比喩など様々な形で「私法世」を批判しながら「自然の世」を
描写し,その中で,自然の体系だけではなく学問の質やあり方,言葉の意味や
言語の社会的な役割,書くことの意義など,様々なテーマに触れていきます。

昌益は「自然の世」において言語が不要な,無意味なものだと主張しています。
なぜかというと,言語は「聖人」(=孔子や仏陀など)によって作られたもの
であり,その目的は人をコントロールすることにあるからです。つまり,言語
は世の中にヒエラルキーを作ってしまう要素でしかなく,「私法世」の腐敗の
一つの大きな原因です。

そう考えると,では,そもそも言語は誰のものなのかという疑問が,自然と生
まれてきます。月例会で,参加者全員で議論しながらその疑問について考えて
みました。答えに辿り着いたわけではありませんが,具体的かつ建設的な話に
なり,非常に有意義なディスカッションでした。例えば,言語は確かに人を支
配するために悪用できますが,コミュニケーションに必要不可欠な道具でもあ
るわけなので,ことばには2つの側面があるのでは,そして教師として実践に
臨む時にその2つの側面のうちどちらを重視するかが大事なのでは,などといっ
た点が話し合いの要になりました。

結論は,もちろん,ありません。が,議論できたことこそが一番の収穫だった
と実感しています。

そして,対話が続きます・・・

ありがとうございます!
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◆◇【6月25日(土)開催】第43回月例会報告◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「久保田竜子『グローバル化社会と言語教育』を読む
―言語教育の「商品化」と「消費」を考えるシンポジウム
(第3回研究集会 IN 香港)プレ企画ー」報告
                古屋憲章(研究集会実行委員会副委員長)
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第43回月例会では,言語教育の「商品化」と「消費」を考えるシンポジウム
(第3回研究集会 IN 香港)のプレ企画として,基調講演者の一人である久保
田竜子氏の著作『グローバル化社会と言語教育―クリティカルな視点から』
(くろしお出版)http://www.9640.jp/xoops/modules/bmc/detail.php?book_id=122970
所収の次の論文を題材に「言語教育の「商品化」と「消費」」に関し,議論し
ました。

第4章 言語道具主義への問い
   ―英語・新自由主義・日本における言語テスト―

第5章 余暇活動と消費としての外国語学習
   ―楽しみ・願望・ビジネス英会話を考える―

月例会では,まず,『グローバル化社会と言語教育』の翻訳協力者である佐野
香織さん(早稲田大学),瀬尾匡輝さん(茨城大学),瀬尾悠希子さん(大阪
大学大学院),米本和弘さん(東京医科歯科大学)を中心に4~5名のグルー
プを作りました。

そして,各グループで主に次の各概念に関し,論文の内容を確認したり,事例
を挙げたりしながら,理解を深めました。

・言語道具主義
・想像の共同体と投資としての外国語学習
・余暇活動と消費としての外国語学習

その上で,投資であれ,消費であれ,言語教育が(言語テスト,英会話学校等
の形態で)「商品化」されているという現状を踏まえ,言語教育に携わる私た
ちは,何を目的に,どのような教育実践を展開するかに関し,意見交換が行わ
れました。

今回の月例会は,シンポジウムに参加されない方にとっては,「言語教育の
「商品化」と「消費」」という問題を意識するとともに考える機会になったよ
うです。また,シンポジウムに参加される方にとっては,シンポジウムに参加
するにあたり,事前に「言語教育の「商品化」と「消費」」という問題に関す
る自身にとっての問いを明確化にする機会になったのではないかと思います。

※2016年度月例会の開催記録に関しては,下記のURLをご参照ください。
http://alce.jp/monthly/2016/
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◆◇おしらせ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
━【参加者募集:7月16,17日@香港】━━━━━━━━━━━━━━━
第3回研究集会:言語教育の「商品化」と「消費」を考えるシンポジウム
───────────────────────────────────
日程: 2016年7月16日(土),17日(日)
会場: 香港大学
参加方法: 事前参加申込受付中(割引があります)
詳細情報: 研究集会特設サイト
      https://sites.google.com/site/researchseminar03/
合同開催: 言語文化教育研究学会,つながろうねっト,
      香港大学日本研究学科日本語プログラム(順不同)
お問い合わせ: meeting@alce.jp(言語文化教育研究学会研究集会事務局)
───────────────────────────────────

開催趣旨――商品化と消費って?

私たちは,「商品化」を〈ある物や活動が経済的行為と結びつき,価値を持
つようになること〉,「消費」を〈人々が商品化された物や活動に対価を支
払い,手に入れ,欲望充実やアイデンティティ構築のために費やすこと〉と
定義します。

言語教育と経済的行為は切っても切れない関係にあるにもかかわらず,これ
まで議論が避けられがちだったのではないでしょうか。私たちは香港での研
究集会で「言語教育の商品化と消費」について向き合い議論したいと考えて
います。

みなさまのご参加,お待ちしております。

プログラムより
7月16日(土)
【基調講演】(12:50〜13:50)
   久保田竜子(ブリティッシュコロンビア大学)「消費としての学び――
   言語学習のフレームを問い直す」
【特定課題セッション】(14:00〜17:20)
   ロズリン・アップルビー(シドニー工科大学)「日本の英会話学校にお
   ける白人西洋男性の商品化と消費」
   ハキューン・リー(ジョージア州立大学)「“私達は永遠の英語学習者”
   ――年配ESL学習者の余暇活動としての英語学習」
   陶堅,大友瑠璃子(香港大学)「民間英語学校教師のアイデンティティ
   の複雑性――ある日本人教師のケース」
   ギャヴィン・フルカワ(東京大学)「コードの曖昧性と日本のテレビに
   おける英語の商品化」
【特別セッション】(17:30〜18:30)
   笈川幸司「効果的な発音指導と学習者の話す力を引き上げる授業」
7月17日(日)
基調講演2(10:00〜11:00)
   神吉宇一(武蔵野大学)「市場化の進む世界における日本語教育のあり
   方――『語学』から『教育』へ」



━【参加者募集:7月23日】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第44回月例会
 「日系カナダ人はいかにしてカナダ市民となったのか
 ―多文化主義への移行期における市民運動から探る―」
 秋山幸さん(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
───────────────────────────────────
日時: 2016年7月23日(土)14:00〜15:45
会場: 早稲田大学早稲田キャンパス 8F会議室
参加費: 無料
予約: 不要(当日,直接会場にお越しください。)
お問い合わせ: monthly@alce.jp(月例会委員会事務局)
───────────────────────────────────

話題提供者は,1980年代以降に日本から渡加した人たちに縁があり,子ど
もの言語教育に対する意識を調査してきました。調査協力者らはよく日系カナ
ダ人について,「どうやって生きてきたのだろう」と話します。

自分や子どもの未来を日系カナダ人に重ね合せているように思え,自分自身
も日系カナダ人の歴史に向き合ってみようと思うに至りました。

日系カナダ人の歴史は1877年に始まり,来年で150年を迎えます。この
間,日系人はカナダ市民としての地位確立のために長い年月を費やしました。
カナダ社会が,イギリス系市民を中心とした序列型から多文化主義へと変容を
遂げるなかで,日系カナダ人は,「カナダ市民」像を当該地の人とともに模索
し,市民運動を展開しました。月例会では,ブラジルやハワイなどの日系人の
歴史との重なりや異なりと合せて紹介します。

カナダに限らず,「日系人」は,その言語・文化・アイデンティティをめぐ
り,「日本人としての民族的表象と不可分」(山東,2005:139)にし
て語られることがあります。このような「日本人としての民族的表象」に比較
して,日系カナダ人の営みはどのようなものとして捉えることができるか,そ
して,彼らの運動のプロセスからわたしたちは何を学ぶことができるかを考え
る機会となればと思います。

【参考資料】
山東功(2005)1950年代のブラジル日系社会と日本語『阪大日本語研
究』17,139-157.
http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/handle/11094/4154



━【全文公開中】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『言語文化教育研究学会 第2回研究集会in金沢 報告集』
テーマ:人類学・社会学からみたことばの教育
    ―言語教育における言語イデオロギーを考える―
http://alce.jp/meeting/past.html#p02b
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誌 名: 言語文化教育研究学会メールマガジン 第10号
発行日: 2016年7月16日
発行所: 言語文化教育研究学会 事務局
     〒187−8505 東京都小平市小川町1−736
     武蔵野美術大学鷹の台キャンパス三代純平研究室内
編集,発行責任者: 言語文化教育研究学会広報・連携委員会 松井孝浩
お問い合わせ・情報掲載依頼: ezine@alce.jp
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