言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

シリーズ研究会「⾔語教育とアイデンティティ」

【第11回:2012年7月27日】
バイリンガル学生たちのアイデンティティ

※英語通訳付き。事前登録なし,参加無料,来聴歓迎。

概要

最初の部分で,まずCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)で展開された複言語主義的アプローチでの“アイデンティティ”の概念が,バイリンガリズムの枠組みとしての多文化主義的なアプローチであるカナダの状況にはなぜ適切でないのかについて簡単に説明します。

その後,カナダの英語話者とフランス語話者の間の“アイデンティティ”の複雑な関係について,いくつかの例証をあげ,最後に,何人かのフランス語話者のケベック人たちの,英語学習に対する“アイデンティティ”態度について報告します。結論として,個人と社会の両方の観点から,“アイデンティティ”の否定的・肯定的な側面についてまとめます。

【第10回:2012年3月2日@パリ】
私はどのような教育実践をめざすのか

開催要領――事前参加申込が必要です

  • 日時: 2012年3月2日(金)12:30~18:00
  • 会場: パリ日本文化会館[アクセス
  • 主催: 早稲田大学日本語教育研究センター言語文化教育研究会
  • 共催: フランス日本語教師会(AEJF)[ホームページ

参加申し込み

一般参加の場合は,事前申込みをお願いします。会場のパリ日本文化会館の入館チェックのため,事前申込みリストに登録されていなければ入館できませんのでご注意ください。

参加ご希望の方は,メールに【氏名・ご所属・メールアドレス】をご記入の上,
gbkk-paris@gbki.org(第10回研究会事務局)
までお送り下さい。定員30名になり次第,締め切らせていただきます。

プログラム

[12:30~13:15]講演: 細川英雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
「私はどのような教育実践をめざすのか」という問い――複言語・複文化主義に根ざして(講演内容と今後の展開
[13:30~14:30]口頭発表 セッションI
学習者はどう「書く」か――「書く」過程とその過程における他者性に注目して/武藤理恵(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
日本語学習者の作文内容を深める相互行為と推敲作文の質的分析/張珍華(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
私はどのような教育実践をめざすのか――「自分の日本語」を日本語教育学でどのように評価できるか,という問いに変えて/鄭京姫(早稲田大学日本語教育研究センター)
[14:40~15:40]口頭発表 セッションII
「外国語学習者と母語話者がわかちあう学びとは」――母語話者としてフランス語教室に参入する留学生の意識変容のプロセス/今中舞衣子(大阪府立大学)
「言語実践」科目における日本語学習ポートフォリオ活動――シャルル・ド・ゴールリール第三大学の実践から/山内薫(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
「好きなもの」と「好きな言葉」をつなぐ活動――学習者個人の価値観の言語化をめざして/原伸太郎(リール第3大学)
[15:50~16:50]口頭発表 セッションIII
境界を耕す言葉/山本冴里(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
違いを乗り越える教育/佐藤貴仁(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
実践研究におけるリフレクションに関する一考察――私にとって実践研究とはどのような営みか/古屋憲章(早稲田大学日本語教育研究センター)
[17:00~18:00]全体討論

講演内容と今後の展開――細川英雄

「〈私はどのような教育実践をめざすのか〉という問い」というテーマは,2012年度春から始める予定の日本語教師研修プロジェクト実践にかかわるものです。

言語文化教育研究会では,2006年から2007年にかけて,全国の日本語教師を対象に,インターネット上で交流するユビキタス講座を開設しました。このプログラムに参加しつつ,私は日本語教師の方々のさまざまな声を聞いてきました。その多くは,教材を一方向的に教えることへの疑問だったのですが,一方で,もし教材がなかったら自分は教室で何ができるのかという不安の声がありました。この不安は,「わたしはどのような教育実践をめざすのか」という自分自身への問いの欠如からくると私は考えています。しかし,多くの教師は,その問いを自分以外の他者と交換する機会もなく,特に海外で日本語を教える現場では,いつの間にか孤立してしまいがちです。

こうした状況を乗り越え,教師間のネットワークを築くために,日本語教師研修プロジェクトを立ち上げます。このプロジェクトではまず,実際の日本語学習者とのやり取りの経験をもとに,世界各地の日本語教師へネット対話の意義を呼びかけます。呼び掛けに応じた日本語教師を対象に半年間,ネット研修を行い,その成果を2012年9月のシンポジウムと国際研究集会にて発表できるような体制を組んでいきます。ネット研修では,世界各地の日本語教師を対象に,インターネット・プロジェクトを核にして,インターネット上に配信する研修プログラムに参加希望を募り,その参加者を対象に,ネット上でのやり取りを経て,それぞれの教育実践についてのレポートをまとめる作業を行います。

多くの日本語教師の抱える問題は,与えられた教材をどのように効率的に教えるかというところにありますが,これでは,自律的な実践を行うことができません。この研修では,「わたしはどのような教育実践をめざすのか」という理念について深くやり取りし,その意味を知ったうえで学習者と接することになるため,一方的な知識の伝達ではなく,インターアクションの本来の意味を知ることができ,さらにそれを自分自身の理論としてまとめていくことが可能になります。それに加え,後半の実践では,実際にネット上で日本語学習者とのやり取りを体験することになります。このことにより,自分の実践に生かしていけるようになります。こうして「わたしはどのような教育実践をめざすのか」について他者とともにやりとりすることを通じて,この研修で訓練を受けた日本語教師は自律的に学習者と向き合うことが可能になります。

なお,この実践プロジェクトの成果は,国際シンポジウム及び単行本の形で社会に発信されます。

スケジュール予定

2012年3月
パリで研究会(講演・ワークショップ・研究発表)を開催
4月中旬
プロジェクト結成(スタッフ参加メンバー確定,継続を含む)
  • 過去のユビキタス講座のノウハウを活用
  • 準備段階での日本語学習者の状況をネットで公開し,具体的なイメージをつくりやすくする
5月初旬
プロジェクト開始(インターネット上)
  • 研修プログラムに沿ってスタッフと参加者がネット上で意見交換を行い,教育実践についての自分の考えを深めるレポートを作成する。
  • ユビキタス講座でのノウハウを生かし,ティーム制によりネット上のやり取りを活性化する。
7月下旬
対話レポート完成(この成果を発表へ向けてまとめる)
  • 研修レポートとしてその成果を実践研究の形で発表する。
9月上旬
国際シンポジウム・研究集会開催(成果の単行本化)
2012年10月~12月
第2回プロジェクト(上記で参加した日本語教師メンバーを巻き込んだプロジェクトを結成する)
2013年3月
パリ・ワークショップ・言語文化教育研究会 in Paris 開催

【第9回:2012年1月】「言語と文化の多元的アプローチとその参照枠(CARAP)― 欧州評議会の提案するツール」M.カンドリエ氏

第9回言語文化教育研究会を,以下の要領で開催します。

プログラム

  • 講演「言語と文化の多元的アプローチとその参照枠(CARAP)― 欧州評議会の提案するツール」※
    ミッシェル・カンドリエ氏(仏・メンヌ大学名誉教授・京都大学客員教授)

※日本語通訳あり

講演概要 (山本冴里――当日通訳担当)

ヨーロッパ言語共通参照枠が紹介されて以来,日本の言語教育界でも,複言語主義という用語が引用されるようになってきた。理念としては難解なものではないし,欧州評議会の文書でも,クリアーに説明されている(たとえば,2007年のDe la diversite linguistique a l'education plurilingue : Guide pour L'elaboration des politiques linguistiques educatives en Europe. Version Integrale, p. 18)。

しかし,ここに「教育」がついて複言語教育,複言語主義教育となれば,私には,具体的なその「教育」のイメージを結ぶのは,とても難しい。

それは私が――そしておそらくは私たちが,特定1言語の教育に,特定1言語の教師であるということに,慣れきっているからだと思う。たとえば日本語教育に,英語教師に,韓国語教室に。複という名の言語は無いから,複言語教育がイメージできない。複言語主義教育となればなおさらだ。

言語文化教育研究会(1月20日)で講演が予定されている,Michel Candelier(ミッシェル・カンドリエ)氏は,フランスのメーヌ大学教授であり,またグラーツにあるヨーロッパ現代語センターの「複言語主義に基づく,相互文化的な教育」プログラム責任者でもある。

実は,先日,カンドリエ氏と打ち合わせした時の話があまりに面白くて,当初は1時間の予定だった講演を,2時間にのばしていただいた(30分の質疑時間も含まれる)。当日は,ヨーロッパの複言語主義を標榜する言語教育研究者達が,どのような姿勢と施策と試行錯誤のもとに「教育」の具体的なイメージを練り上げつつあるのか,これからどこへ向かおうとしているのか,そうしたことが話題になるはずだ。

複言語教育・複言語主義教育に惹かれる方にとっても,理念とその具現の形との関わりに興味のある方にとっても,知的好奇心を刺激し,ゆさぶる時間になると思う。たくさんの方のご来場を願う。

【第8回:2011年11月】映画『語りかける からだとことば 自分の声と出会う』の上映と高田豪さんのお話

  • チラシ日時: 2011年11月25日(金)17:00~20:00
  • 場所: 早稲田大学22号館8階会議室
  • 主催: 言語文化教育研究会(主宰:細川英雄)
  • 共催: NPO法人東京賢治の学校,自由ヴァルドルフシューレ
  • 連絡先: 早稲田大学日本語教育研究センター・言語文化教育研究会 list@gbkk.jpn.org
  • チラシをダウンロード

映画は,演出家・竹内敏晴氏が2000年に賢治の学校の先生方や保護者の方を対象に行った,宮澤賢治『鹿踊りのはじまり』のレッスンを,「賢治の学校」主宰・鳥山敏子さんが中心となってまとめたもの。この学校は,ドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーによるシュタイナー教育を取り入れた,独自の教育を行っている。今回の上映会では,東京賢治の学校自由ヴァルドルフシューレで演劇専科講師を務める高田豪さんに「竹内レッスンのからだとことば」というテーマでお話をうかがう。

事前登録なし,参加無料,来聴歓迎。

【第7回:2011年7月】体系・能力・アイデンティティ――総合活動型日本語教育の成立と変容

  • チラシ日時: 2011年7月29日(金)17:00~19:00
  • 会場: 早稲田大学早稲田キャンパス22号館8F会議室
  • チラシをダウンロード

話題提供者: 細川英雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科)

私が総合活動型日本語を実際のカリキュラム上で立ち上げたのは1998年のことである。日本語教育そのものに本格的にかかわるようになったのは,1986年からのことなので,それまでにおよそ12年経過している。この間,私に起こったことは何か。また,98年の立ち上げから,現在まで13年がたち,活動そのものの考え方もかなり変化してきている。

ここでは,活動型の成立に至る12年間を振り返り,そのうえで,98年以後,現在に至るまでの13年間の私自身の変容について考えてみたい。ここで見えてきたことは,体系の学習/教育という意識から,能力育成という立場が生まれたこと,さらに,この能力という見方から,アイデンティティという観点が発見されたことだ。

ここに至るまでに,どのような思想的変遷があったのか。また,最終的に,ことばの学習/教育はアイデンティティの捉え方とどのようにかかわるのか。東日本大震災の年,自分の25年の活動実践を改めて振り返る。 細川英雄

当日のスライド