大会企画フォーラム「言語文化教育研究とは何か」
テーマ趣旨
言語文化教育研究学会(ALCE)の年次大会は10回目を迎える。これまでの大会では
- 第1回 教室・学習者・教師を問い直す
- 第2回 〈多文化共生〉と向きあう
- 第3回 言語文化教育のポリティクス
- 第4回 ナラティブの可能性
- 第5回 市民性形成と言語文化教育
- 第6回 言語文化教育とクリエイティビティ(Creativity)
- 第7回 「アートする」教育
- 第8回 ディスアビリティ・インクルージョンと言語文化教育
- 第9回 コン_ヴィヴィアリティと言語文化教育
をテーマに設定し,それらと言語文化教育研究についての議論の場を創ってきた。
記念大会となる第10回大会では,過去に議論したテーマに「理工系とことば」と「AIとことば」を加え,ファシリテーターがテーマごとのグループに入り,参加者同士がディスカッションできる大規模なフォーラムを行う。最終的には参加者それぞれが『自分が思う言語文化教育研究とは何か』という答えにたどり着くことを目的とする。
登壇者
- ファシリテーターとテーマ
- 牛窪隆太(教室・学習者・教師),三代純平(多文化共生),牲川波都季(ポリティクス),北出慶子(ナラティブ),南浦涼介(市民性形成),嶋津百代(クリエイティビティ),松田真希子(アート),中井好男(ディスアビリティ・インクルージョン),佐野香織(コン_ヴィヴィアリティ),湊淳・福村真紀子(理工系とことば),笹井一人・田嶋美砂子(AIとことば)
- 全体進行
- 宮本敬太,瀬井陽子
登壇者プロフィール
- 牛窪隆太(うしくぼ りゅうた)
- 東洋大学国際教育センター准教授。専門は,質的データ分析法,教師研究,実践研究。早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程修了。博士(日本語教育学)。Waseda Education(Thailand)・タイ早稲田日本語学校副主任講師,早稲田大学日本語教育研究センター助手,関西学院大学日本語教育センター日本語常勤講師・言語特別講師を経て,現職。主著に『教師の主体性と日本語教育』(2021,ココ出版,単著),『日本語教育 学のデザイン』(2015,凡人社,共著)などがある。ビジネス日本語はじめました。
- 三代純平(みよ じゅんぺい)
- 武蔵野美術大学造形学部教授。早稲田大学大学院日本語教育研究科博士課程修了(日本語教育学)。 専門は,日本語教育,ライフストーリー研究,実践研究。韓国の仁川外国語高校,徳山大学等を経て,現職。留学生やサハリン残留日本人永住帰国者などの移動の経験についてライフストーリー研究を行い,ことばの学びとアイデンティティ,社会の関係を探究する。また,ライフストーリー研究の成果をもとに,社会参加,あるいは社会変革を目的とした日本語教育の実践研究に取り組む。主著に『産学連携でつくる多文化共生―カシオとムサビがデザインする日本語教育』等
- 牲川波都季 (せがわ はづき)
- 関西学院大学総合政策学部准教授。早稲田大学大学院日本語教育研究科修了,博士(日本語教育学)。早稲田大学日本語研究教育センター助手,ホープカレッジ現代古典言語学部客員助教,秋田大学国際交流センター准教授などを経て,現職。専門は,言語表現教育,日本語教育。「日本の外国人政策とCEFR─複言語・複文化能力,仲介能力を習得する意義,発揮する困難」(西山教行,大木充(編)『CEFRの理念と現実 現実編』くろしお出版,2021),『日本語教育はどこへ向かうのか─移民時代の政策を動かすために』(共著,くろしお出版,2019)などを執筆。
- 北出慶子(きたで けいこ)
- 立命館大学文学部,同大学院言語教育情報研究科 教授。専門は日本語教育,日本語教師教育,多文化間コミュニケーション,質的研究。主著に『ナラティブで拓く言語教育』(2021, 新曜社, 共編著),『TEMでひろがる社会実装―ライフの充実を支援する』(2017, 誠信書房, 分担執筆), “Discourses of Identity Language Learning, Teaching, and Reclamation Perspectives in Japan”(2023, Palgrave Macmillan, 分担執筆)などがある。
- 南浦涼介 (みなみうら りょうすけ)
- 広島大学大学院人間社会科学研究科准教授。大学を異動するたびに教育分野の中心を変えているために,専門と呼ばれる分野が社会科教育,日本語教育,国語教育など次第に広がってきている。現在の所属では,教育方法学,カリキュラム学,外国人児童生徒教育学を中心に仕事をしている。現在の研究の大きな関心は,学校教育における外国人児童生徒を包摂するカリキュラムのありようと,教師教育。
- 嶋津百代 (しまづ ももよ)
- 関西大学外国語学部/外国語教育学研究科 教授。早稲田大学,東京芸術大学卒業後,ハワイ大学大学院東アジア言語文学研究科修士課程修了。大阪大学大学院言語文化研究科博士課程所定単位取得後退学。言語文化学博士。韓国・高麗大学校日語日文学科助教授を経て,2015年関西大学外国語学部に着任,現在に至る。研究領域は,日本語教育学,日本語教師教育学,ディスコース研究。教師や学習者,教育実習生のナラティブやストーリーテリングの考察を研究活動の主軸に置く。長年の日本語教師の経験を生かし,学部および大学院研究科の日本語教師養成講座を担当している。
- 松田真希子 (まつだ まきこ)
- 東京都立大学人文社会学部教授。大学時代のインド留学をきっかけに日本語教育に興味をもち,約20年日本の大学で留学生の言語文化教育に従事。2005年にブラジル人を含む外国人の地域ボランティア活動に参加したことから南米日系人の言語文化教育研究へ。移動基盤社会において誰もがありのままに主体的に参加できる社会デザインの研究や言語研究に取り組んでいる。主な編著に『「日系」をめぐることばと文化ー移動する人の創造性と多様性ー』(くろしお出版)がある。
- 中井好男(なかい よしお)
- 大阪大学大学院人間科学研究科准教授。農学(学士),言語文化学(修士),文学(博士)を経て,現在は人間科学共生学系においてディスアビリティ研究とマイノリティ研究を行っている。研究では,言語の違いや障害によるコミュニケーション上の障壁をことばのディスアビリティと捉え,「ことば」と「対話」と「共生」をテーマにしている。研究の出発点は現在も関わりのある日本語教育にあり,「人」にまつわる事象を考える質的研究に従事することで,自己理解と自己変容に迫られ,他者理解の研究とともに,ろう者家族としての当事者研究も行なっている。
- 佐野香織(さの かおり)
- 長崎国際大学人間社会学部准教授。専門は,日本語教育学,日本語教師教育,成人教育・学習。多文化共生,省察的実践論,経験のことば化,対話と学び,ナラティブをキーワードとして「多様な人が多様な関心を持ってともに生きる社会をつくる」観点をもとに,ことばの学びに軸を持って多様な領域を横断しながら実践研究を続けている。『〈やさしい日本語〉と多文化共生』(庵功雄(監)第20章)ココ出版,『越境する日本語教師と教師研修』(第5章)くろしお出版等執筆。
- 湊淳(みなと あつし)
- 1984年京都大学理学部(地球物理)卒。1988年東京大学大学院物理工学専攻修士課程修了。日立工機,国立環境研究所勤務ののち,現在茨城大学大学院理工学研究科教授。博士(工学)。国立環境研究所時代は,温暖化ガスのリモートセンシングに関する研究に従事した。茨城大学では,超音波や光を用いた各種計測,振動及び傾斜計測などを使った防災のためのIoT技術開発などに従事している。また茨城大学では1995年の着任以来留学生担当教員として,理工系教員として留学生への授業(工業日本語,理数基礎)やサポートなどを行っている。
- 福村真紀子(ふくむら まきこ)
- 茨城大学大学院理工学研究科助教。早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程修了。博士(日本語教育学)。専門は,地域日本語教育。2010年,東京都日野市に,いろいろな国や地域にルーツを持つ子育て中の女性が交流するサークル「にほんご あいあい」(のちに「多文化ひろば あいあい」に改名)を立ち上げ,現在も活動中。日本の様々な地域をめぐり,地域日本語教室のボランティアなどに向け日本語にこだわらない日本語教育の開拓活動をしている。著書に『結婚移住女性のエスノグラフィー:地域日本語教育の新しい在り方』早稲田大学出版部がある。
- 笹井一人(ささい かずと)
- 2002年神戸大学理学部地球惑星科学科卒。2008年神戸大学大学院自然科学研究科博士後期課程(地球惑星システム科学専攻)修了。 博士(理学)。2008年より東北大学電気通信研究所ポスドク研究員を経て,2009年より同大学助教。2018年より茨城大学工学部情報工学科准教授となり現在に至る。自己言及とフレーム問題,それをのりこえて生きるシステムおよび知能の原理その応用についての研究に従事。
- 田嶋美砂子(たじま みさこ)
- 茨城大学大学院理工学研究科准教授。シドニー工科大学大学院人文社会科学部博士課程修了。中学校・高等学校における教育実践に基づき,英語教育学・社会言語学・批判的応用言語学にまつわる研究に従事している。言語教師教育論や社会言語学に関係する学術書の翻訳にも携わっている。本大会の大フォーラムでは,「理系」の学部で教育実践に関わる「非理系」の教員として,参加者の皆さんと一緒に「AIとことば」について探究したいと考えている。